一級建築士事務所 別枝大輔建築研究所

ブログ

2018年7月12日(木)

2018.07.12 / ブログ

10時出社。

昨日のお酒が少し残っているせいでやや体がだるいので、頭がスッキリとするまで雑務をこなしていきます。そうやって時間を過ごしていると一本の電話。今回大雨の災害に遭ったお客様の親族の方から連絡でした。一度現場を見に来て何をしたらよいか教えて欲しいとのことなので午後からの予定をすべてキャンセルして現地行きを決定。浸水被害の現場に行くのは初めてなので、協力会社の方々に連絡し知識を入れてもらいます。

昼食を済ませて、真備町へ。熱中症・感染症の対策をしっかりとしたうえで、岡山よりの道中で長靴、ビニール製の手袋、マスクを購入して行きます。これも頂いたアドバイスの通り。ただやみくもに行くだけでは後々に影響します。いつも通りの倉敷市内を通過し、高梁川沿いの道を走っていると明らかに風景が変わっていきます。映画のようにシーンが切り替わります。機能していない信号、泥まみれになった状態で放置されている車など当日の被害の大きさがはっきりと分かるような風景です。道中は大変混雑していますが、譲り合いの場面が見られることも多く、まだまだこれからという前向きな気分にさせてもらえます。

現場に到着して、簡単に自己紹介をさせてもらいすぐに建物を調査。欄間窓に残る水面の跡で一階の長押の上まで浸水したということが明確に分かります。罹災証明の取得等の説明をしたうえで現状やっておかなければならないことを説明します。

まずはとにかく濡れている部分を乾かすこと。築40年を超えている木造の建物なので、特に基礎・土台関係はすぐにでも乾かしたい部分であることを説明。すでに畳や家具等は撤去を完了していたので、床の下地板まで剥がすことをお勧めします。2階で避難生活を続けられるとのことなので、最低限の廊下の足場は残すようにお伝えし、どうしても剥がせない部分は30cm角程度の穴をあけて通気を取るようにお話しします。土壁はほぼすべて剥がれ落ちてしまっているので、とくに作業の必要は無し。貫等はそのままの状態で残しておくようにお話しします。リノベーションする際には撤去するかもしれませんが、現状で取ってしまうと構造的な不安となることをお伝えします。

一通りのチェックと確認が済み次第、すぐに現状の間取りを採寸していきます。簡単に作成した図面を元に今後の希望をヒアリング。「どうしてもここに戻ってきて自分たちで生活がしたい」と強くおしゃられている姿を見ると僕も勇気づけられます。日曜日にはご家族の方が応援に来てくださるそうなので、その時に合わせて今後の方向性をお話しするための打合せを予定することを約束します。

同じように被災地を回られているネクサスアーキテクトの中藤社長が時間ができたので現場を見に来てくれるとのことだったのでお願いをします。再度中を確認していただき、アドバイスをいただきます。相手の事を思いやる対応は流石でした。自分に足らない部分を背中で教えてくれている気がします。個人の力だけではできないことが、チームを組むことによってなんでもできる気持ちになるので不思議です。

待っている時間に周辺の状況を確認してきました。道路は災害ゴミで埋め尽くされていました。必要なものを届けることも大事ですが、不要なものを無くすことも必要であると感じます。ニュースだけでは分からないことをたくさん現場で感じることができたと思います。

今回の災害が起こって、何も動くことができず悶々とした時間を過ごしていましたが、今回のご依頼をキッカケにして僕にも何かできそうだと感じる一方、建築士を頼って相談してくれるという状況がまだまだ見えてきません。現場の後片付けでそれどころではないというタイミングかもしれませんが、この状況には少しむなしさを感じました。こういう時はこうしたらよいという発信力がまだまだ足りないように思います。

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